「数字カード法(澤口式育脳法)」の取り組みについて

我が家の双子弟、まそら(年中児、自閉症スペクトラム障害)は、2019年6月に「人間性脳科学研究所」の所長であられる澤口俊之先生の「教育相談」を受けた。

その際、澤口先生からは、たくさんの貴重なアドバイスをいただいたが、それらの中で最も重要だろうと思われるのが「数字カード法」の取り組みである。

以下、我が家における「数字カード法」の取り組みについて記すが、澤口先生の「教育相談」を受けておられない方には何の役にも立たないことを最初に明記しておく。今後、「教育相談」を受けようとされている方に、何かしら参考になることがあればと思う。

 

●「数字カード法」にはコツがある

澤口俊之先生の「数字カード法」には、取り組むにあたってコツがある。正しく取り組めていない事例が散見されるとのことで、現在は「数字カード」の販売を行っていないと澤口先生はおっしゃっていた。しかしながら、「教育相談」の場では購入することができる。私も購入させていただいた。f:id:rumraisinn:20200301120620j:image

 

「数字カード」は、中古品がネット上で多数出回っており、入手することはさほど困難ではないだろう。説明書もついており、先生よりお話を聞いていれば、「フムフム」と思って読むことができるが、そうでなければ、やり方を正しくイメージするのは少々難しいかもしれない。個人的には、紙の説明書ではなく動画であったならば、もっと取り組みやすいものになるようにも思う。

なお、澤口先生ご本人より、「数字カード法」の取り組み方をご教示いただいても、その通りに実施するのはかなり困難なのではないかと思う。
自閉症スペクトラム障害の我が子に、
「今から見せるカードの数字を覚えなさい」
と言っても、別段面白くもないこの作業をやりたがるはずもない。基本的に嫌がるのだ。
すぐに他のことをして遊ぼうとするし、ウロウロし始めるし、「数字」を覚えることに集中することなどとてもできない。
しかも、取り組み初めは、「数字」を覚える能力が全くないので、取り組み自体が全く成立しない。
つまり、「数字カード法」に取り組ませることも、「数字」を覚えさせることも、最初の段階でつまづいてしまうのだ。

澤口先生には「楽しく」取り組むことが大事で、できなくても叱ってはいけないと教わるが、子どもが取り組まない時点で、イライラし、「やりなさい!」と言って、叱りつけることになる。
更には、集中して取り組まなかったために覚えられなかったような場合も、「集中しなさい!」とか「真面目にやりなさい!」などと叱ることになる。

「数字カード法」に取り組むのは、はっきり言って、親子共にものすごいストレスだ。我が家の場合は、子どもが泣きながら取り組んだ日も度々あった。
「楽しく」といくら言われても、怒らずに取り組むことは不可能ではないだろうか?と思う。
私に忍耐力や「楽しく」取り組むための「工夫」が欠如していると言われればそれまでなのだが。

そして、どうやっても教えていただいた通りにはできない。アレンジが加わってしまうのだ。
我が家は、双子弟、まそらだけではなく、兄まひろにも「数字カード法」に取り組ませたのだが、まひろは出されたカードの「数字」を覚えるために(忘れないために?)、自分独自の覚え方をあみ出していた。そこで、2枚のカードすら覚えられないまそらに、「まひろみたいにやったら?」とまひろのやっている覚え方を、親の方から指示してしまったのだ。これは取り組み方として、不適切だったかもしれない。

 

 

●「数字カード法」に取り組むための前提条件
①「数(1~9)」の理解

「数字カード法」に取り組むにあたっては、まず「1~9」までの「数」の理解が必要となる。
例えば、3個のリンゴを見たときに、それが「3」であると認識できなければならない。

 

②「数字(1~9)」が読める
「数字」が読めないことには「数字カード」には取り組めない。
「9」のカードを出されて「えーっと、ロク?、キュウ?」などと迷って即答できないようなレベルなら、「数字カード法」に取り組むことは到底不可能だろう。
「数字」を覚えるだけで精一杯な状況において、目の前のカードの「数字」が何かを思い出しているような余裕は全くない。思い出しているうちに、それより前に出されたカードの「数字」を忘れてしまうだろう。出されたカードの「数字」は、即答できるようにならなければなならない。

 

③「数字(1~9)」が書ける
「数字」が書けなくても、「数字カード法」には取り組めるように思うが、駄目らしい。「1~9」までの「数字」は書けるようにならなければならないようだ。どのレベルまで書けるようになる必要があるかは「教育相談」では特には明示されなかったが、澤口先生の著書『発達障害の改善と予防』には、「数字」の大きさや形についてまで記載されている。

 

●「数字カード法」に取り組むにあたって
①「数字カード法」には時間制限がある
「数字カード法」は、何ヵ月あるいは何年と長期間取り組むものではないらしく、著書によれば、通常は「2~3ヵ月」とされているようだ。まそらの場合は「2ヵ月」と言われたが、実際のところは、勝手に3ヵ月間取り組んだ。

②取り組み時間は1日10分
長時間の取り組みは必要ない。まそらの場合は1日10分と言われたが、あまりに集中できないので、30分を超えて取り組む日もときにはあった。
加えて、1日に2回(朝夕)行ったので、合わせると、平均的には1日25分程度(朝15分、夕10分)取り組んでいたと思う。
なお、夕方の取り組みは、入浴も夕食も終わってからで、まそらはもう疲れていたり、眠たかったりで、頭の働きも鈍り、集中力も落ちて、朝と比べると正答率がかなり低くなる傾向にあった。
「数字カード法」は疲れている時間帯では、効果的には取り組めないと思う。

 

③「数字カード」は自作のものでもよい
「数字カード」は自作したものでも何の問題もなく使用できる。
子どもに見せる面(表面)に、はっきりと見やすく数字を書けばよい。また、子どもに何の数字を見せているのか親がわかるように、裏面にも数字を書いておくとなお取り組みやすい。


●「数字カード法」我が家の取り組み
澤口先生には、ざっくりと「まず数と、数字の読み書きをやって、秋からカードに取り組んでください。まずは4枚が目標です」と言われた。
「焦る必要はない」とのことで、ゆったりと「数の理解」から開始。そして、「数字」を読む取り組みも始める。ここまでは、さほど苦労することはなかった。
しかし、「数字」を書く段階に入り、苦戦するようになる。「秋」になっても一向にできるようにはならない。どの程度で「できるようになった」と判断してよいのか全くわからず、「秋」を優先するのか、「数字が書ける」ことを優先するのかの狭間で悩んだ。そして、結局、11月より「数字カード法」を開始したのだった。
この「数字を書く」取り組みについては、実は、現在も継続中であり、また別の記事に記したいと思っている。

 

さて、「数字カード法」だが、初めは2枚から開始した。時間も長くは取らず、数分で、強く嫌がる前にやめるようにした。
当初、2枚くらい楽勝でしょ、と思っていたのだが、弟、まそらは覚えられない。こちらが驚いてしまうほど、全く、覚えることができない。
最初のうちは気にしなかったが、1ヵ月ほどが経過しても、まそらは2枚のカードの数字を覚えられるようにはならなかった。
一方、兄、まひろは、取り組み開始の2日後には5枚、18日後には6枚へと、順調に進んでいく。
私は、まそらに対し、ひどく焦りを覚えるようになった。

このままいつまで経っても2枚を覚えられなかったらどうしよう・・・。
段々追い詰められ、ときには、私が泣きそうになりながら「数字カード」に取り組むようになった。時間も長くかけるようになっていった。

「劇的な効果がある」
そう言われている「数字カード法」。

うちの子には、当てはまらないのかも・・・
そんなうまい話なんて、やっぱりないんだ・・・

そう、気弱になることもあった。

しかし、変化は急にやってきた。「数字カード法」を始めて1ヵ月と1週間が過ぎたある日の朝。
まそらが、急に2枚を正答するようになった。そのまま3枚に進んだ。その日の夜には、3枚も何度か正答できるようになった。
そして、その翌朝。3枚の正答率が取組み後半になり上昇を見せた。夜には、3枚をそこそこ正答するようになり、4枚へ進んだ。

澤口先生より言われた最低ラインの4枚クリアの可能性が初めて見えた。
よかったー。

本当に、本当に、本当に、ホッとした。
いつもいつも追い詰められるような、押し潰されるような思いで育児をする中、こんなにホッとしたのはいつ以来振りだろう?と思った。
この日は、夜中に酔って記事をアップし、翌朝に削除するというようなこともあった。

そして、さらにその翌日。まそらは5枚に取り組むようになった。
2枚から5枚へ進むのに要した日数は、わずか3日だ。一体、彼に何が起こったのだろう?

 

しかし、その後、3ヵ月間の取り組みを終えるまで、まそらは6枚に進むことはできなかった。1ヵ月と3週間、ずっと5枚に取り組み続けた。
5枚の正答率は、日によってかなりのばらつきがあった。
最後の1ヵ月間は、40~90%と正答率にはかなりの幅が見られた。平均的に見るなら、60~70%程度かと思われる。
この「ばらつき」についてだが、本人がどこまで集中できるかにかかっていると感じる。集中できればきちんと覚えられるが、注意が散漫だと全く駄目だ。

あちこちに気がそれ、じっとできずにゴソゴソ動く。そして、覚えた数字をすぐに忘れてしまう。
こうした度合いがひどければひどいほど、当然正答率が低下する。
ここで、考察を要するのが、集中できる日とできない日の「差」は何に起因するのかということだ。
この件については、確証は得ていないし、得られそうにもないのだが、また改めて別の記事に記載する予定だ。

ちなみに、「数字カード法」を終えた現在、日常生活において、「劇的な効果」は見られない。「数字カード法」が適切に実施できていなかったのかもしれないし、「数字カード法」だけでは不十分なのかもしれない。

しかし、いずれにせよ、「数字カード法」に取り組む前に、「集中力」を何らかの手段で身につけておいた方が、「数字カード法」の効果をより高めるられるに違いないと思う。

今、我が家の双子たちは、
こばと教材出版」さんの
『発達支援教育教材シリーズ 中級編 ジャンプアップ 集中力・注意力アップトレーニングシート』
に取り組んでいる。
「数字カード法」の取り組みにより、「集中」することの大切さを強く認識したためだ。何やかにやと「知識」を詰め込む前に、「行動」を自分で制御できるよう「脳」そのものをしっかりトレーニングした方がよいと感じた。
こちらも、また改めて別の記事にしたいと考えているのだが・・・。
こればかりは、こばとさんに許可をいただく必要がありそうだ。
『発達支援教育教材シリーズ 中級編 ジャンプアップ 集中力・注意力アップトレーニングシート』の1ページ目の画像を、当ブログに掲載できればよいのだが・・・。なにせ、私の文章力では、画像がないと、双子たちの撃沈振りをわかりやすく説明することが難しいのだ。
文章だけで頑張れるかな~と思いつつ、今日はこの辺で。