我が家には、
多動傾向の双子兄、まひろ(小学1年生、通常学級在籍、通級指導教室利用)と、
ADHD+自閉症スペクトラム障害の双子弟、まそら(小学1年生、特別支援学級〈情緒〉在籍)がいる。
この夏休み中に、発達の専門病院にて、2人とも、
「WISC−Ⅳ(ウィスク − フォー)」
を初めて受けた。
簡単に説明すると、WISC検査は、
「言語理解」
「知覚推理」
「ワーキングメモリー」
「処理速度」
の4つの指標と、IQ(知能指数)を数値化する検査である。
「発達障害」かどうかを調べるための検査ではなく、あくまで「知能」をみるためのものだ。
先日、「WISC−Ⅳ」の結果説明と、診察が行われたのであるが、まずは、2人が「WISC−Ⅳ」を受けたときの様子を記しておく。
●双子兄、まひろの「WISC−Ⅳ」実施状況
弟まそらを担当してくださっている臨床心理士さんによる検査実施。
日頃より、ちょっとした時間で遊んでもらったり、おしゃべりしてもらったりしている臨床心理士さんなので、まひろは、いつも通りのリラックスした状態で検査を受けたものと思われる。
検査後、臨床心理士さんに、どんな様子だったかをお訊ねした。
「計算はこれからするが、言語理解は平均的だと思われる。知覚推理は低く出そう。細かいものを見るのが苦手。途中、何度か集中が切れた。」
とのこと。
●双子弟、まそらの「WISC−Ⅳ」実施状況
まそらについては、担当の臨床心理士さんではなく、初めての臨床心理士さんが検査を実施してくださった。
このことは事前に知らされており、内心、上手くいかないのでは?との懸念を持っていた。私としては、いつもの慣れた臨床心理士さんにしていただきたかったのだが、何か意図があるのかもしれないと思い言葉を飲んだ。
人見知りはさほどしないまそら。当日、機嫌よく部屋に連れられて行く。
終了後、まひろと同様に、様子を伺った。
「計算はこれからだが、数字の復唱と逆唱は標準。語彙力も標準。集中できず、処理速度は低く出るだろう。検査開始時はよくしゃべり、後半は疲れてきて黙って取り組んだ。思っていたよりできた。」
とのこと。
「集中できず、・・・」ねえ。
そうだろうと思う。
初めての臨床心理士さん。まそらは興味津々だったに違いない。臨床心理士さんに色々聞いただろうし、自分のことも沢山話したことだろう。
それにより、実際の力よりも低い数値が出てしまうのでは?と残念な気持ちになった。
検査実施から数週間後、ドキドキしながら結果の説明を受けに病院へと向かう。
まずは、2人の診察から。
●双子兄、まひろと、弟まそらの診察
☆医師による双子の診察
2人を椅子に座らせ、挨拶からスタート。
「こんにちは」
まひろ:こんにちは。
まそら:こんにちは。
「お名前は?」
それぞれ答える。
「夏休みの宿題は終わりましたか?」
まひろ:うん。後は絵日記だけ。
まそら:うん。
「夏休みは楽しかったですか?」
まひろ:雨ばかりだった(ので楽しくなかった)。
まそら:楽しくなかった。
気にせず、質問を続ける医師。
「何が楽しかったですか?」
まひろ:〇〇に行った。
まそら:(まひろに続いて)〇〇。
〇〇について、それぞれが口々に説明する。
「学校は楽しいですか?」
まひろ:うん。
まそら:楽しくない。
「授業は何が好きですか?」
まひろ:体育。
まそら:沈黙。
「いいよと言うまで、目をつぶってください」
まひろ:多分、できた。
まそら:うつむいていたので、よくは見えなかったが、できている様子だった。
「両手を前に出して、グーパー、グーパーをしてください」
医師、実演。
右手がグーのときは左手はパー。
2人とも、できた。
「これはできますか?」
医師、実演。
片手ずつ、親指と人差し指の先をくっつける→親指と中指の先をくっつける→親指と薬指の先をくっつける→親指と小指の先をくっつける。
2人とも、できた。
「右手はどっちですか?」
まひろ:できた。
まそら:まひろを見て、真似をする。
「左手はどっちですか?」
先程と反対の手を出せばいいだけなので、2人とも、できた。
「右手を上げてください」
まひろ:できた。
まそら:まひろを見ながら上げる。
「左手を上げてください」
2人とも、できた。
「右手で左耳を触ってください」
まひろ:考えながら、ゆっくり手を動かし、できた。
まそら:できない。
「片足で立ってください」
医師、実演。
両方の足で確認。
2人とも、できた。
ここで、「はーい、いいよー。お母さんとお話するから、塗り絵して遊んでて。」
と医師がおっしゃり、診察は終了となった。
☆医師から、兄まひろについて、私(母)に質問
「1学期と夏休みの様子について教えて」
担任の先生から何か言われることは特にない。
「頑張っている」とのこと。
上級生から叩かれて、気にしていることがあった。
家では、「死ね」「殺す」ばかり言っている。
「学校でも言っている?」
まひろがすかさず、「言ってない、言ってない」と割り込んできた。
「学校で言ってないなら、まあまあ・・・」
と医師。
「その他、何かある?」
コレステロール高値で、かかりつけ医に勧められ、〇〇病院を受診。血液検査の結果では、投薬レベルではないとのことで、栄養指導を受けることになった。
☆医師から、弟まそらについて、私(母)に質問
「1学期と夏休みの様子について教えて」
担任の先生からは、
・授業をきちんと受けられない
・給食当番の役割が果たせない
と言われている。
5年生の男児に暴力をふるわれるのが怖くて、学校に行きたくないと言う。
あまりに怖いので、下足箱も、支援学級の下足箱ではなく、交流級の下足箱を使用するようになった。
面談時に、担任の先生に、
「まそらを通常学級に移すか、支援学級を2つに分けて、その男児と物理的に離すしか解決方法はないと思う」
と伝えたが、雰囲気から察するに、2学期からも変わりなく支援学級でやっていくことになりそうだ。
「何かよかったことは?」
「自立」の授業が好きで、「支援学級が好き」だと言う点はよかった。
「その他、何かある?」
兄まひろと同様に、コレステロール値が高値。エコーでは、わずかに脂肪肝の所見が。血液検査の数値的には投薬レベルではないが、栄養指導を受けることになった。
8月より作業療法を開始した。今後、月に1回のペースで通う。
「精神保健福祉手帳」の取得は難しいか?
「療育手帳は検査の数字で切られるが、精神保健福祉手帳は診断書次第だ。だが、今は必要ないのでは?障害者枠を使って就職を考える状況になれば、そのときに検討」
と医師。
うーん。。。
もちろん、「就職」のことが取得の主要な目的ではあるのだが、「税制上の優遇措置」も我が家の家計にとっては大変に重要なことであるのだ・・・。
必要以上の「障害者」のラベリングは、まそらの「傷」になるということだろうか。
主張するということは・・・、いつもムズカシイものだなあ。。。
●兄まひろの「WISC−Ⅳ」結果
医師による診察が終わると、そのまま医師より、「WISC−Ⅳ」の結果説明が始まった。
まずは、「WISC−Ⅳ」における「正常」範囲についてだが、「85〜115」とされているようだ。
兄まひろは、4領域全てにおいて、平均内に収まっていた。
得点が高かったものから順に挙げると、
「言語理解」→「ワーキングメモリー」→「処理速度」→「知覚推理」
の順となっている。
「言語理解」が突出して高い。
「処理速度」と「知覚推理」は、結構低い数値だった。
これは、普段の様子からも納得できる結果だ。
彼は、語彙がなかなか豊富で、よくしゃべる。「言葉」に不自由しているようには全く見えない。
ネックとなっているのは、まずは、やはり「集中」できないこと。
日頃より、何事もダラダラしがちで、食事や出かける準備など、本当に遅い。毎日困り果てている。
今回、「処理速度」が低いとの結果が出て、グッと集中して速く行動することができないのだということを改めて認識した。
ただし、、、処理速度は遅くても、作業自体は、ミスがないように工夫し、正確に行ったとのことで、評価すべき点もあった。
そして、最も低い「知覚推理」。これはまさにその通りだと思う。
家庭にて、毎日取り組む「点描写」などのワークが、彼は死ぬほど苦手なのだ。全くわからないらしい。
日々取り組んできてのこの結果。何もやっていなければどうなっていただろうと思う。
●弟まそらの「WISC−Ⅳ」結果
弟まそらは、「処理速度」以外の3領域は、平均内に収まっていた。
得点が高かったものから順に挙げると、
「言語理解」→「知覚推理」→「ワーキングメモリー」→「処理速度」
の順となっている。
彼の場合は、指標間の差が大きいため「一般知的能力指数」が算出されており、こちらの得点は、兄まひろの「全検査」と同じ点数となった。
兄まひろと同様に、「言語理解」が突出して高い。
そして、「処理速度」が突出して低い。
「ワーキングメモリー」については、3項目の内、1項目は取り組んでいなかった。
彼もネックとなる「集中」。
例えば、、、あくまで、「例えば」の話である。
もし仮に、先日記事にした作業療法士さんが「WISC−Ⅳ」を実施したとしたらどうなっただろう、と思う。あの作業療法士さんなら、まそらの集中をぐんと引き出し、上手く取り組ませることができたかもしれない。
実施者の能力や相性が、得点に影響を与える可能性を考えずにはいられない。
ただ、どうであれ、「処理速度」が遅いことは、彼の日常生活の様子からも明らかだ。
着替えに何十分もかかったり、食事に何時間もかかったり、漢字の書き取りや計算など、単純な作業でも信じられないほど異様に時間がかかったり・・・。
今回の「WISC−Ⅳ」には、彼の弱さが本当によく反映されていると思う。
そして、もう一歩踏み込んでみるに、まそらは、「応用的思考力」が弱いようだ。知識はあるが、それを使って深く思考することができない。想像したり、抽象的なことを考えたりすることも苦手そうだ。
彼の「弱み」。
何とかしなければ、と思う。
さて、ここで、医師からのお話。
「よく頑張ったと思います」
とのこと。
そうなのだ。医師は当初、まそらには、「WISC−Ⅳ」は難しくてできないかもしれない。その場合は、「新版K式」を・・・
と言われていたのだ。
「WISC−Ⅳ」に取り組めた時点で、まそらは医師の予想を軽く裏切った形だ。
そして、
「日頃の家庭学習の効果がでている。いくら知能が高くても、知らなくては答えられない。」
とも。
「いえいえ、家庭で勉強していることなんて、漢字と計算くらいで・・・」
と私。
「いやいや、絵本を読んであげたり、そうした日々の積み重ねが、知識としてきちんと身についてきている。」
と医師。
ふと思う。
「知識」と「知能」は異なるのでは?
私の中では、
「知識」は、記憶することによって「脳」に蓄えられている「情報」であり、
「知能」は、「思考力」や「頭の回転の速さ」などの「脳」そのものの「性能のよさ」
という線引きがなされている。
「WISC-Ⅳ」で計れる「知能」とはいったい何なのだろう?
例えば、「語彙」を沢山知っているからと言って、「知能が高い」ということになるのだろうか?
疑問だ・・・。
そして、困ってしまうことに、医師は、
「コンサータの使用を勧める。」
とおっしゃるのだ。
以前、勧めていただいたときは、お断りしたのだ。
が、今回、医師は強く「コンサータ」を推してこられた。
私が勝手に思うに、今回の「WISC−Ⅳ」の結果が、医師の予想よりよかったためだろう。
まそらには、そこそこの知能がある。コンサータで脳の状態をよくし、集中できるようにすれば、もっと色んなことが吸収でき、力を伸ばせる。このまま、霧がかかったようなぼんやりした頭の状態でいさせるのはもったいない。
そんなふうに思われたのではないか。
と、あくまで勝手に推察するのである。
だが、コンサータは使わない。
後一歩だ。
まそらは、いい線まで来ている。
何となく感じる彼の改善。
就学し、兄まひろと会話のキャッチボールができるようになってきた。
以前は、
まひろ 「まそら、これいる?」
まそら 「うん。」
くらいだったのが、
まひろ 「まそら、これいる?」
まそら 「うん、いる。こっちのもほしい。」
まひろ 「ああこれね。〇〇に使うの?」
まそら 「うん。そう。〇〇に使う。」
まひろ 「〇〇に使うんだったら、□□もいいんじやない?」
まそら 「いいね。□□も使うわ。見てー!△△でしょ。もう1個ちょうだい。」
まひろ 「いいよ、どうぞ。」
まそら 「ありがとう。」
といった感じだ。
ああ、会話してるな、と思う。
頭は以前に比べ、随分動くようになってきた。
後もう一歩、どうにかして彼の「脳」を鍛え、引き上げるのだ。
●診察を終えて
「人間性脳科学研究所」の澤口俊之先生は、著書『幼児教育と脳』において、
「IQの個人差(ばらつき)の60%は遺伝が要因となっており、残りの40%が環境の影響を受ける。」
と記されている。
双子の「言語理解」の突出した高値は、遺伝に違いない。
私の、もっと言うなら祖父(私の父)の遺伝だろう。
そして、残念ながら、「知覚推理」と「処理速度」の低さも私からの遺伝なのではないか?と思う。
例えば、初めて降りた駅のホームで目的の出口を探す際、一緒にいた友人は瞬時に案内を見つけ、右なら右に歩きだすが、私は「え〜っと、東11番出口は・・・(キョロキョロ)」といった感じで、しばし時間を要してしまう。
他にも、何車線もある交差点でずらりと並ぶ標識から、進むべき路線を瞬時に判断したりするのも苦手だ。日常生活で困るほどではないが、明らかに私の「脳」の弱い部分だ。
これは、「処理速度」にも密接に関連している。得た視覚情報を瞬時に判断できないため、行動が遅れるのだ。
手先の不器用さも、手先を使う作業速度の遅さにつながる。
そして、「字が下手」だとか、「ピアノが上達しない」とか、そういうところにもつながっているように思う。
ただし、私は「集中力」は人並みにあると思っているので、この点については、双子とは大きく異なる。
私については「今更」だが、双子たちは、今が鍛え時だ。
彼らの「脳」が成長しきる前に、私は何をしてやれるだろうか。
ずっと、意識してきた「集中」の問題。
時間を計って取り組むようなワークを取り入れたいと思う。
限られた時間で、全力でやり切るようなワーク。
難しい作業である必要はない。
「集中」させられればいいのだ。
ご褒美も用意すれば、動機づけもできるだろう。
何かいい教材がないか探してみようと思う。
ワーク以外に、「そろばん」もよさそうだ。
加えて、スポーツも有効そうだ。
サッカーや、バスケットボール、テニスなどゲーム性の高いスポーツは集中を要する。集中しなければ得点できない。
彼らがおもしろいと思ってやれるスポーツがもしあれば、こちらもやる価値があると思う。
ひとまず、バスケットボールを始めることにしている。6月に体験に参加し、入会を決めたが、その後、コロナのために1度も練習には参加できていない(練習が実施されない)。
コロナ・・・、本当に困る。
そして、ここにきて思う。
澤口俊之先生はやっぱりすごい。
澤口先生の言われていることが、ここにきて実感を伴ってくる。
「ワーキングメモリを鍛える」
「運動、特にサッカーをするのがよい」
「そろばんがいい」
まそらは、園の年少さんのときに、澤口先生の「教育相談」を受けたが、その際、澤口先生はごくわずかな時間で、まそらの
「知能は、中か中の下くらいはある」
とおっしゃった。
今回の「WISC-Ⅳ」の結果そのものではないか。
あれから、もう2年以上が過ぎた。
私は、私の「最善」を尽くしてこれただろうか・・・。
「 知覚推理」が弱い兄まひろにピッタリだと思う。