双子兄に、「芸」を求めてみた

「おかあさーん、タマネギ、もう食べられない・・・」

 

昨日の夕食時、双子兄、まひろ(年長児)が訴えてきた。

 

実際のところ、昨日の野菜の量は充分で、まひろが残したいと言った量は全く問題にならない量だった。

 

就寝時刻も迫っており、ダラダラ時間をかけられるより、さっさと終わらせて寝させたいとの思惑も働く。

が、残すことが安易に認められると思われては困る。

 

そこで、思いつきで言う。

 

「お母さんを笑わせて。何か面白いことをしてくれたら、タマネギを食べなくてもいいことにしてあげるわ〜」

 

何のことかと、思考が停止した様相のまひろ。

ついでに動きも停止し、かたまっている。

彼の頭の中の「?????」が、見えるようだ。

 

帰宅していた夫がフォローに入る。

「タマネギ食べなくていいんだって。ロンドンブリッジ(英語版)の2番を歌ったら?」

と助け舟を出す。

 

これがなぜ笑えるかと言うと、

「ロンドンブリッジ、オペペンピン、オペペンピン・・・」

と謎の歌詞で歌うからだ。

まひろにはそう聞こえるらしい。

 

「今から始めます」

と挨拶をさせて、いざ「芸」の開始。

しかし、彼の口から出てきたのは、

「ウンチ、ウンチ、お尻が大好きだ♪」

という、これまた謎の歌だった。

 

「打ち合わせとちがーう!」

と夫。

 

次のネタをコソコソと仕込む。

そして、まひろが言う。

「将来は、消防車の運転士になりたいです」

 

一体何が面白いのだ?

普通ではないか。。。

と、・・・な私。

 

どうやら夫は、

「将来は公務員になりたいです」

と言わせて、笑いを取ろうと画策したらしい。

子供らしからぬ堅実すぎる「夢」。

確かに、これは笑ってしまうかも。

しかし、残念ながら、失敗に終わってしまった。

 

さらに次を仕込む夫。

今度はフリつきだ。

「シャッキーン」と曲げていた腕を伸ばす。

この次にセリフがあるようだったが、まひろ無言。

「一緒に言って」

と、夫を見て、モジモジ。

 

夫は、まひろの手首にあるガングリオンをネタに、腕を振らせ、

「シャッキーン、ガングリオン、ぼくの宝物」

と言わせるつもりだったらしい。

ちょっと、ついていけない次元だ。

 

最終的には、

「タマネギ、パクパク、いと悪し(わろし)」(清少納言風)

と、夫に言わされ、何だかもうかわいそうになり、タマネギはOKとしたのだった。

 

しかし、この気まぐれな思いつきから、思いもかけず気づきを得る。

まひろは、プレッシャーに弱い。

アドリブも苦手だ。

いざ注目されるとなるとモジモジしてしまう。

何でもいいからとにかくやる、といったような気概はない。

失敗を恐れず、物怖じしない大胆な弟まそらとは正反対だ。

 

まひろはどんどん人前に出していった方がいい。

注目に慣れ、緊張を乗り越える力を今のうちから意識的につけていった方がよい。

 

名づけて「タマネギ事件」。

気まぐれから、まひろの新たな課題をひとつ見つけることとなった。