発達の専門医による診察を受けた

我が家には、4歳になる双子がいる。

兄、まひろには、多動傾向がある。弟、まそらは、自閉症スペクトラム障害で、多動傾向もある。

 

先日、発達の専門医による診察があった。前回の診察は4月で、随分時間が経ったような、あっという間だったような・・・よくわからない感じがした。

 

前の先生も、この4月からの今の先生も、診察は2人同時に行われる。 診察室に入ると、先生はまず2人を椅子に座らせた。そして、テストのようにいくつか確認をしていく。

 

●子どもたちの様子の確認

〈指の動き〉

先生が、「これやって」と自ら指の動きを見せながら、2人を順に確認していく。 まず、先生が、自分の親指と人差し指の先をくっつける。「OK」の形だ。次に、親指と中指、更には薬指で確認。

双子兄、まひろは何とかついていくが、双子弟、まそらは、中指あたりからすでに怪しい。

 

ひと通り確認がすむと、今度は、「これできる?速いよ!」と言って、親指とその他の指をランダムかつスピーディーに合わせていく。

ここでも、まひろは、先生の指の動きを懸命に追い、何とか同じように指を動かす。

一方、まそらはもうぐちゃぐちゃだ。好き勝手に動かし、まったくできない。

 

〈背中で、グーチョキパー〉

まず最初に、先生がグーチョキパーの手の形を2人と確認する。

「これは何?グーだね」 といった感じだ。

そして、 「見ちゃダメ」 と言って、まひろの背中でチョキの形にした手(実際には、人差し指と中指の指先)をあてる。

「これは何?」

「チョキ!」

「せいか~い」

といったふうに進める。

まひろは概ね正答した。

続いてまそら。彼はまひろには今ひとつ及ばない。ちょこちょこ間違える。

 

〈キャッチボール〉

椅子に座ったまま、先生とキャッチボールをする。

先生が2人に順番にボールを投げる。2人ともそこそこキャッチできた。

 

〈目を閉じる〉

「いいよって言うまで、目をつぶって!」と先生。

まひろは結構長い時間頑張ることができ、少し驚く。

一方、まそらは、すぐに目を開けては、また閉じるを繰り返す。目を閉じてじっと待つなんて、まそらには至難の業に違いない。

 

〈片足で立つ〉

「じゃあ、片足で立てる?」 と先生自ら片足で立ってみせる。

2人とも、どちらの足でもそこそこ頑張れた。これは、1年前はまったくできなかったことだ。成長しているのだなと思う。

 

〈ケンケンパ〉

「じゃあ、これできる?ケンケンパ」 と先生が実演。

2人ともやれているような、やれていないような・・・。

 

「はーい。おしまい」 の声で終了となった。

先生は、そのまま2人をおもちゃの置かれた机に向かわせ、約束をさせる。

「次の新しいおもちゃで遊ぶときは、その時使っているおもちゃを片付けてから遊んでね」

2人とも、「ハイ」と返事をして、遊び始める。

そして、ようやく、私とのお話の時間になった。

 

●私とのお話

まずは、先生からいくつか質問される。

「最近の様子は?」

「特に変わったことはありません」

 

「園の先生から何か言われたりすることは?」

「特にないです。まひろについては、褒められることはあっても、問題行動の指摘を受けることはありません」

 

「習い事は、その後どうですか?」

「水泳とピアノを始めて、それまでの習い事を、ひとつやめました」

「ピアノはとてもよいです。先程の指の動きもできるようになってくるでしょう」

 

そして、先生からのお話。

まずは、兄、まひろについて

前回と比べると、落ち着きが見られ、指示も聞けるようになってきた。このままいってくれれば、小学校は普通級に入り、薬も使わずにいけるかも・・・。もし、まひろが一人っ子だったら、もっと落ち着いた子どもだったかもしれない。2人いるから、パワーアップしてしまうのでしょう。

 

次に、弟、まそらについて

こちらは、厳しいお話となった。

兄との差がはっきり出てきた。まそらは、支援級の検討が必要になってくるかもしれない。 年長になった時点で2人とも発達検査を実施し、その結果を見て、支援級にするかどうかを検討していきましょう。

 

最後に、双子であることについて

双子は異年齢の兄弟とは異なり、特殊だと言われている。まひろが、今後お兄ちゃんの自覚を持ち、まそらを引っ張っていってくれればいい。そして、2人がそれぞれの弱いところを支えあっていければいいと思う。

 

というような、お話があった。

「支えあって・・・」のところで、先生はとても優しい顔をされていた。きっと子どもが好きな方なのだろうと思う。

 

「何か気になることや、お聞きになりたいことは?」と言っていただけたので、いくつかお訊ねしてみる。すでに、いろんな場で、いろんな方に相談してきたが、解決をみない事柄について、改めて伺う。

主に、弟、まそらについてだ。

 

①頭の打ちつけについて

まそらは、就寝前と、眠りが浅くなったときなどに、布団に頭を打ちつける行為をする。やめさせようとすると怒る。本人は気持ちよくてやっているようなのだが、「自傷行為」に該当するようだ。

 

これについては、 安全の面から、打ちつける場所を決めてさせましょう(角に頭を打ちつけ、頭蓋骨を骨折した事例があるとのこと)。 マッサージによる刺激の他、日常生活に様々な「感覚遊び」を取り入れ、好む刺激を「頭」からそらし、他に分散させるようにしてみて下さい。

とのアドバイスをいただいた。

 

②食事を自分で食べない上に、時間がかかりすぎる

まそらは、食事が遅い。2時間くらいかかるのは普通で、3時間かかることもある。時間の決まった用事があり、なおかつ夫がいるような場合は、車に食べ終わらない朝食を持ち込み、私が食べさせながら出かけるというようなことも、ときにはある。

先日、初めて「どうやって飲み込んだらいいのかわからない」と発言した。「なぜ飲み込めないのか、こっちがわからない」と思ってしまう。

いつも、いつまでも噛み続けているまそら。食事の時間は、1日の中で最もイライラする時間だ。

 

先生からは、次のようなお話があった。

食事は1時間程で切り上げましょう。本人も「食べさせられている」感じになってしんどいでしょう。テーブルに時間がわかるようなものを置くとよいです。5分座って食べたら、5分休憩というふうにして、少しずつ座っていられる時間を長くしていきましょう。

「座っていられる」というのは、「普通級に進むための前提条件」ですから。背中でグーチョキパーをするような、集中を必要とする取り組みを家庭でも行って下さい。

 

③人の話を聞いていない

まそらに、話しかけても、耳に入らないことが多い。「まそら・・・」と呼びかけても、こちらを見もせず、基本的に反応がない。ひたすらお絵かきなど自分のことをし続ける。 指示も通らず、コミュニケーションが成立しにくい。

 

こちらは、次のようなアドバイスをいただいた。

主に、指示が通らないことについてだ。

することをパターン化して、儀式のようにしてしまいましょう。やることを描いた絵をはって、できたら、はずすというようにするとよい。することを型にはめてしまうと本人は混乱しません。

 

④リハビリを長期間休むと、何か大きな弊害が生じるか

こちらは、思い切ってお訊ねしてみた。

「家庭で取り組めていれば弊害はない」とのこと。ピアノと同じで、どんなに素晴らしい先生でも月に1回教えてもらうだけでは、上達はしない。家で毎日練習することが大事。リハビリも、たまにやるより、家庭で毎日取り組む方がずっと効果がある、とのことだった。

リハビリをやめるかどうかについては、今しばらく検討したいと思う。

 

■診察を受けて

就学に向けて、今、2人が身につけなければならないことは、「椅子に座っていられる」ことだと認識する。小学校の普通級に入るなら、それが最低限できなければならないことなのだ。

 

先生から言われた通り、家でも「集中」するための取り組みを始めた。キャッチボールや、背中でのグーチョキパーなどだ。できるようになると、背中に「数字」を書くなど、難易度を上げていくとよいとのこと。

加えて、袋に入っているおもちゃが何かをあてる遊びもよいようだ。

「数字」を書く練習など、他にもやらなければならないことがあり、時間的には今、限界状態だ。が、やるしかないと思う。

 

診察を終えて数日後に、作業療法のリハビリがあった。

先生から、「今回より、運動だけでなく、座ってやる取り組みも始めていきます」 と、言われる。とても積極的な方だと思う。

リハビリはリハビリの担当者主導で、不可侵のものであり、医師が口をはさんだりすることなどないのかと思っていた。

同じ医師でも、人によって随分違うものだと、前回の診察同様に思う。

 

今の先生・・・、メラメラと燃えるような情熱を感じる。初めてお話した4月は、長時間、海風にあたった後のような疲労を感じた。先生の強すぎるパワーは、私の精神を高揚させもし、疲弊させもする。不思議なものだと思う。

 

今後、2人に対し、改善に向けて様々なアプローチを試み、きっと最善を尽くして下さるに違いない。 先が見えない「今」に、きっと一筋の「道」を何としてでも切り拓いて下さる・・・。そんな気がした。